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裁判員裁判による少年に対する死刑判決に関する声明
2010年12月8日

 2010年11月25日、仙台地方裁判所における裁判員裁判で、犯行当時18歳(判決時19歳)の少年被告人に対し死刑を宣告した。
 この裁判は、従来からわたしたちが指摘してきた少年被告人に対する裁判員裁判の問題点(子どもと法・21 パンフ「裁判員になったら」参照)がそのまま表出したものである。
 少年事件にあっては、なぜ少年法があるのか、その理念はどういうものかという少年法の趣旨と理念の理解が不可欠である。裁判員においてもそれらを熟知し、審理しなければならない。
 判決後会見した裁判員の一人は、裁判長から少年法の理念の説明を受け理解して審理に臨んだという。だが同裁判員は他方で、「少年だからといって罪が軽くなる法律がおかしい。」「14歳だろうが、15歳だろうが、人の命を奪ったという重い罪には、おとなと同じ刑で判断すべきと思い、そう心がけた」と話した。こうした発言をみると、はたして少年法に則って審理されたのか、公正な審理だったのか、という疑問がある。しかも5日間の審理3日間の評議という短期間の判決である。
 少年法の理念を貫くために、刑事裁判においても、家庭裁判所で調べられた少年調査票(社会記録。成育歴・性格・親子関係・家族関係・環境・更生の可能性等)の取り調べが重要視されている(少年法50条、刑事訴訟規則277条)。実際、裁判官だけの裁判の場合には、膨大なこの記録(プライバシーが多く含まれているため)を法廷外で読んでいた。ところが最高裁司法研修所は、少年事件だからといって特別な審理方法は考えていないとし、その上、少年調査票については裁判員の負担を考えて、結論部分だけでよいとした。これでは、少年の成育歴等更生の可能性を探るための資料が出ない。犯罪事実だけが判断の対象になってしまう。この裁判では、30分ほど調査官意見書と鑑別結果報告書の総合所見結論部分を読み上げたにすぎないという。だからこそ「更生可能性は著しく低い」といって死刑判決に至ったと思われる。
 検察官は「重大犯罪について成育歴を考慮する余地はない」と主張したというが、重大事件こそ成育歴が大きく影響している。それをみて更生の道を探るというのが少年法の理念だ。また、検察官は「少年の性格は自分自身で作り上げた側面が大きい。」というが、そうではない。弁護人がいうように、「生い立ちの不遇さが暴力を肯定させ、事件を引き起こした」「思春期に暴力的価値観を是正する人がいなかったことは少年のせいではない」。
 2010年6月20日になされた国連子どもの権利委員会(CRC)の第3回日本政府への所見では、少年に対する裁判員裁判に触れ、見直すよう勧告している(83.84.85c)。また、少年司法制度に関わるすべての専門家が関連の国際基準に関する研修を受けることを確保すること、と勧告している85(h)。第1回公判当日に集められる裁判員に、上記国際基準に関する研修は不可能である。少年事件で裁判員裁判はやはり問題なのである。
わたしたちは死刑制度には反対である。ましてや少年に対して死刑は許されないと考える。子どもの権利条約では少年司法については年齢を広げることを評価していることからもいえる。わたしたちは本判決を認めることはできない。

− 子どもの育ちと法制度を考える21世紀市民の会 (子どもと法21) − 関連サイト 事務局通信
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