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2007年5月17日参議院法務委員会

午前中に以下の参考人意見を聴取した。

1. 長沼範良上智大学大学院法学研究科教授と武るり子少年犯罪被害当事者の会代表は法案賛成の意見を述べた。
 長沼参考人は、警察に触法事件に係る調査権を付与することで適正な事実調査ができ、以後の処遇に資する。しかし、供述拒否権等を明文化するのは消極に解すし、立会権や可視化も消極に解すという意見であった。長沼参考人は、少年の健全育成にとって最も適切な処遇選択の可能性の幅を広げるためのものになるとして、少年院の下限年齢撤廃(おおむね12歳以上)に賛意を示した。また、保護観察中の遵守事項に積極的な機能を持たせる必要があるとして保護処分決定を設けることには大きな意義があるとした。
 武参考人は、少年事件であっても事実認定をしっかりしてほしい、それには警察の捜査・調査が大切ある。14歳未満も同じである。その事実に対してその罪に合った処分が必要である。それは、厳罰化ではなく、適正化である。黙秘権を与えるべきだと言われるが、親や付添人が、加害少年の心を開いて、自分のやったことを正直に言いなさいと教えるべきである。14歳未満の少年であっても、自立支援施設だけではなく、時には少年院送致も考えなければいけないときが来ていると思う。同じ事件にかかわって年齢で少年院と児童自立支援施設と差があるのはおかしい。加害少年に優しい社会だけでなく、もう少し被害者、被害者にも優しい社会になってほしいと願う。その一歩として今回の法案を通していただきたいと述べた。

2. 黒岩哲彦日本弁護士連合会子どもの権利委員会委員長と徳地昭男元国立武蔵野学院長は、法案に否定ないし消極意見を述べた。
 黒岩参考人は、警察への調査権付与でもっとも重大な問題は、具体事例を挙げながら、冤罪の危険であるとした。権利保障については、長沼参考人と正反対の意見を述べた。
 また、日弁連が行なった14歳未満少年の殺人事件の分析によると、被害者が家族である場合が大変多い、つまり家庭環境に大きな問題があるといえるが、このような少年には、温かい擬似家庭の自立支援施設で育て直すことが何よりも必要であり、有益であると考えるとし、少なくとも、小学生を少年院に収容できるような制度は妥当ではないと述べた。
 保護観察中の遵守事項違反を理由とする少年院送致については、信頼関係を基礎とした保護観察制度の神髄を失わせてしまう。保護観察制度の実効性を向上させる制度の推進・改善が必要であると述べた。
 徳地参考人は、少年院の下限年齢撤廃につき慎重にすべきとして、職員が児童と生活をともにして、触れ合いながらつくり出す雰囲気の中で子どもが育ち直り、立ち直っていく児童自立支援施設の処遇を説明。国立武蔵野学院には、1977年から2004年まで、殺人や傷害致死で入所した子ども(全部で9名)いたが、この9件中途中に処遇変更した1件を除き、退所後20歳まで、家庭裁判所の方に係属したという記録が1件もない。予後の成績も良好なのは、児童自立支援施設の処遇内容が重大事件には有効であることを示していると思うと述べた。
 また、それぞれの子どもの適性と段階を踏まえて、被害者の視点に立った教育というものを入れなければならない。児童自立支援施設でも被害者の視点からの教育を行なっているが、犯罪を受け止めるためには、児童自立支援施設のように、子どもたちが職員を心から信用できるものをしっかりと確立した後、矯正教育の矯正ではなく、あくまでも職員と一緒に生活する共生という経験が必要である。少年院収容者に比し、触法での児童自立支援施設入所者は被虐待者が多い。また、成長・発達が未熟であり、触法少年は児童自立支援施設の処遇を優先すべきである。特に自我の発達が未成熟な小学生に対しては、少年院送致では処遇が非常に困難と思うと述べた。

3. 正確な事実認定は当然に必要である。だが、長沼参考人意見のような、警察が背景事情も含め広い範囲で調査をするというのは危険である。
 警察は捜査機関であり、このようなことは児童相談所や家裁の役割である。また、子どもから正確な事実を聞きだせるのは、子どもの特性を理解した人であり、それは本来児童相談所や家裁であるはずである(ここがうまく機能していないとしたら、その機能を発揮できる人的物的措置をすべきである)。子どもの調査には、@子どもの心理を把握する警察官以外の第三者が、子どもが任意に話そうとしていることを確認する必要があるA事前に、子どもが信頼する人に連絡を取って事前に相談できることを説明する必要があるB調査が始まった後でも、子どもが「話すことの同意」を撤回できるよう付添人を入れる必要があると述べた、衆議院法務委員会での奥山真紀子(国立生育医療センターこころの診療部長)参考人の意見は、記憶に新しいところである。
 警察への調査権付与は、黒岩参考人のいうように冤罪を生む危険がある。黙秘権等の権利保障がないとそのおそれは更に大きくなる。それに、黙秘権等の権利保障を消極に解する意見の理由も説得的ではない。正直に話すことが大切とか親との関係などを根拠にする状況は、犯罪少年でもまったく同じである。保護処分も不利益処分だとして少年に対し権利保障すべきとした最高裁判決も無視されている。
 少年院の下限年齢問題については、適切な処遇選択の可能性の幅を広げるため必要という意見と、育ち直しには何が必要かという具体的な子どもの姿が想像できる徳地参考人の現場からの意見とは対照的であった。
 保護観察の遵守事項違反による少年院送致問題については、あまり具体の子どもの姿が見えていないように思える。それに、再犯罪でも必ずしも施設収容にならないのに、なぜ遵守事項違反だけが施設収容しかないのか、いまだに説明されていない。

− 子どもの育ちと法制度を考える21世紀市民の会 (子どもと法21) − 関連サイト 事務局通信
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